ホスト移行の計画で最も後回しにされ、しかし切替直前に牙をむくのが認証です。RACFやACF2が担っていたセキュリティは、AWSにそのままは移せません。「資源に対して誰が何をできるか」を軸にしたメインフレームの世界観と、「アイデンティティにロールを与える」現代の世界観は、設計思想が根本から違うからです。
01世界観が違う — 資源中心 vs アイデンティティ中心
RACF/ACF2/Top Secretは、データセットや資源のプロファイルに対して「どのユーザー・グループがどのアクセスを持つか」を定義する、資源中心のモデルです。一方、AWSやモダンなID基盤は、ユーザー(アイデンティティ)にロールを与え、ロールが権限を持つ、アイデンティティ中心のモデル。この向きの違いを理解せずに1対1で移そうとすると、権限の海に溺れます。
02まず棚卸し — 誰が・何に・どうアクセスしているか
移行の第一歩は、現行セキュリティ定義の棚卸しです。
- ユーザーとグループ — RACFのユーザーID、グループ、その階層
- データセット/資源プロファイル — 何が保護され、誰に何の権限(READ/UPDATE/ALTER等)があるか
- バッチの実行ユーザー — ジョブがどの権限コンテキストで動いているか。ここが後述の伏兵
- 特権 — SPECIAL/OPERATIONS等の強い権限を誰が持つか
03バッチ実行ユーザーという伏兵
見落とされがちなのがこれです。メインフレームのバッチジョブは、特定のRACFユーザーの権限で動いています。移行後、そのバッチが読み書きするデータやリソースへのアクセス権を、バッチ実行のサービスアカウント(AWSのIAMロール等)に正しく写せていないと、切替当日にジョブが権限エラーで全滅します。オンラインのユーザー認証に気を取られ、バッチの権限コンテキストを忘れる——これがホスト移行の認証で最も多い事故です。
04写像の設計 — グループ/プロファイルからロールへ
- RACFグループ → ロール — 業務単位のグループは、そのままロールの単位になりやすい
- 資源プロファイル → ロールの権限 — 「このデータセット群にUPDATE」を「この機能/テーブルに対する権限」へ翻訳
- オンラインユーザー → ID基盤へ統合 — 移行先のWeb画面(Angular等)の認証は、既存の社内ID基盤やKeycloakに寄せると、他システムとSSO統合できる
特に、ホスト移行を機に認証をKeycloakのような統合ID基盤に寄せると、移行したシステムが「その1つだけ独自ログイン」の孤島にならず、全社のSSO・多要素認証の傘に入れます。当社はこの統合認証基盤の構築を得意としています(導入事例/関連ソリューション)。
05監査証跡の連続性
金融・自治体系では、「誰が何にアクセスしたか」の証跡が規制要件です。RACFのログ(SMF等)で担保していた監査証跡を、移行後はCloudTrailやアプリの監査ログ、ID基盤のログで切れ目なく再現する必要があります。移行の前後で監査ログが途切れると、その期間の説明責任が果たせません。証跡の連続性は、認証移行の設計に必ず含めてください。
—まとめ
ホストの認証移行は、RACF/ACF2の資源中心モデルを、アイデンティティ中心のモデルへ翻訳する設計作業です。ユーザー・グループ・資源プロファイル・そしてバッチ実行ユーザーを棚卸しし、あるべき権限に整理してロールへ写す。オンライン認証はKeycloak等の統合ID基盤に寄せ、監査証跡は連続させる。「認証は最後に」で計画すると、切替直前にバッチが権限エラーで止まります。ホスト移行の認証は、設計フェーズの主役の1つとして早く着手してください。
ホスト移行の認証再設計(RACF棚卸し、ロール写像、Keycloakでの統合、監査証跡の連続性)は、EMWの認証基盤の知見が直接活きる領域です。「バッチの権限で切替当日に止まる」事故を、設計で防ぎます。
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