「クラウドエンジニアになりたいけど、何から学べば?」——答えは"基礎"、特にネットワーク(TCP/IP)です。未経験から現場で通用する土台を、TCP/IPからLinux・クラウド・ID・可用性・IaCまで体系的に、かなり深いところまで図解で解説します。この記事だけで学習の地図が手に入るように。

01はじめに — 未経験でも、"地図"があれば迷わない

「クラウドエンジニアになりたい。でも、何から勉強すればいいのか分からない」——未経験の方から一番よく聞く悩みです。AWSの管理画面は広大で、用語も無数。手当たり次第に触ると、たいてい途中で迷子になります。

迷わないコツは、順番です。派手なマネージドサービスから入るのではなく、土台(特にネットワーク=TCP/IP)から積む。土台が分かると、AWSの VPC もセキュリティグループも「暗記」ではなく「理解」に変わり、応用が一気に効くようになります。

現場のコツ:この記事は、未経験から現場で通用するための"最低限これだけ"を体系化した教科書です。TCP/IPをかなり深いところまで掘り下げ、そこからLinux・クラウド・ID・可用性・IaC・学習ロードマップ・現場の姿勢までを一本の地図にしました。ブックマークして、少しずつ潰していってください。

02全体像 — クラウドエンジニアの"土台"は6つ

クラウドエンジニアに必要な土台を、学ぶ順に並べるとこうなります。上から順に積むのが最短です。

#土台なぜ要るかこの記事の章
1ネットワーク(TCP/IP)クラウドは"ネットワークの上"に建つ。ここが全ての土台03〜07
2Linuxサーバーの大半はLinux。操作・調査の基本言語08
3クラウドの基本概念IaaS/PaaS、リージョン、責任共有、課金の考え方09
4ID・セキュリティ認証と認可、最小権限。事故の大半はここ10
5可用性・監視止めない設計、壊れたときに気づく仕組み11
6IaC・自動化手作業をやめ、構成をコードで再現可能に12

まずは 1のネットワークを深く。ここが一番の投資対効果です。次章から掘り下げます。

03ネットワーク① — TCP/IPは「4つの階層」で役割分担

インターネットの通信は、TCP/IPという取り決めで動いています。ポイントは、通信を4つの階層(レイヤ)に分けて役割分担していること。各層は自分の仕事だけをして、下の層を"土管"として使います。

TCP/IP は「4つの階層」で役割分担している アプリケーション層 HTTP / HTTPS / DNS / SSH 「何を」やり取りするか トランスポート層 TCP / UDP ポートで相手アプリを識別・信頼性 インターネット層 IP(IPアドレス) 宛先を決めてルーティング リンク層 Ethernet / Wi-Fi 同じネットワーク内の物理転送 送信は各層でヘッダ付与 上の層は下の層を「土管」として使う。だから下(ネットワーク)から理解すると全体が繋がる。
図:TCP/IPの4階層。アプリは下の層を意識せず使えるが、エンジニアは下(IP・TCP)から理解すると強い。
現場のコツ:なぜ階層で理解するのか——トラブルシュートが「どの層の問題か」で切り分けられるからです。「繋がらない」とき、IP(3層)が届いていないのか、ポート(4層)が塞がっているのか、HTTP(アプリ層)が400を返しているのか。層で考えると原因に最短で辿り着けます。

04ネットワーク② — IPアドレスとサブネット/CIDR

IPアドレスは、ネットワーク上の"住所"です。IPv4は32ビットを8ビットずつ4つに区切り、192.168.1.10 のように書きます。うち一部はプライベートアドレス(社内・VPC内で使う)に予約されています。

ネットワークを区切る単位がサブネット。区切り方を表すのが CIDR記法/24 など)で、末尾の数字=ネットワーク部のビット数を表します。数字が大きいほどホストが少ない小さなネットワークです。

CIDRサブネットマスク全アドレス数AWSで使える数(5個予約後)
/16255.255.0.065,53665,531
/24255.255.255.0256251
/26255.255.255.1926459
/27255.255.255.2243227
/28255.255.255.2401611
覚え方:プレフィックスが1増えるとアドレス数は半分。/24=256、/25=128、/26=64…。AWSは各サブネットで5個のIPを予約するので、使える数はそのぶん少なくなります。手を動かすならCIDR計算ツールで実際に区切ってみるのが一番早いです。
現場のコツ:これがそのままAWSに直結します。VPC=自分専用のネットワーク、その中をサブネットで区切り、公開する層(Public)と隠す層(Private)を分ける。CIDRを理解していれば、この設計が自然に読めます。

05ネットワーク③ — TCP と UDP、3ウェイハンドシェイク、ポート

トランスポート層にはTCPUDPがあります。

TCPが接続を作るときの挨拶が3ウェイハンドシェイクです。

クライアント サーバー ① SYN 「接続したい」 ② SYN + ACK 「いいよ、こちらも接続したい」 ③ ACK 「了解、確立」 接続確立 → ここからデータ転送
図:TCPの3ウェイハンドシェイク。3往復の挨拶で「確実に届く通信路」を作ってからデータを送る。UDPはこれを省いて速さ優先。

そして、同じサーバーの"どのアプリ"に届けるかを決めるのがポート番号(0〜65535)。代表的なものは覚えておくと現場で効きます。

ポートサービスポートサービス
22SSH(サーバー操作)443HTTPS
80HTTP3306MySQL
53DNS5432PostgreSQL
3389RDP(Windows)6379Redis
現場のコツ:AWSのセキュリティグループは、まさに「どのポートを、どのIPから許可するか」の設定です。ポートとプロトコルを理解していれば、「SSHを自分のIPだけに開ける」「DBは外に出さない」といった設計が当たり前にできます。

06ネットワーク④ — DNS と HTTP/HTTPS/TLS

最後に、Webを支える3つ。

DNSは「名前 → IPアドレス」の電話帳です。www.example.com を入力すると、リゾルバが ルート → TLD(.com)→ 権威サーバー とたどって、対応するIPを返します(A/AAAAレコードなど)。

HTTPは、ブラウザとサーバーの会話ルール。リクエスト(メソッド GET/POST+ヘッダ+本文)を送り、レスポンス(ステータスコード+ヘッダ+本文)が返ります。ステータスコードは必ず覚えます。

系統意味代表例
2xx成功200 OK
3xxリダイレクト301 恒久 / 302 一時
4xxクライアント側の誤り400 不正 / 401 未認証 / 403 禁止 / 404 なし
5xxサーバー側の誤り500 内部エラー / 502 / 503 / 504

TLS(旧SSL)は通信の暗号化。HTTPS=HTTP over TLSで、ポート443を使います。接続時にサーバー証明書で相手が本物か確認し、鍵を交換して以降を暗号化します。ここまでを一枚にすると、URLを開いた瞬間の"旅"はこうです。

「https://… を開く」で裏側に起きること(=基礎がAWSに繋がる) ブラウザURLを入力 ① DNS解決名前→IPアドレスAWS: Route 53 ② TCP接続3wayハンドシェイクポート443へ ③ TLS暗号化・証明書確認HTTPS化 ④ HTTPGET /...要求を送信 AWSでは:Route 53 →(ロードバランサ ALB)→ EC2 / コンテナ が応答を返す DNS・TCP・TLS・HTTPを知っていれば、VPC・セキュリティグループ・ALBの設定が「理解」になる。
図:URLを開いた瞬間の「リクエストの旅」。この4ステップがそのままAWS(Route 53・ELB・EC2)の設計に対応する。
現場のコツ:4xxか5xxかを見れば、原因が自分(リクエスト)側かサーバー側かが即分かる。403なら権限、404ならパス、502/504ならバックエンド(AWSならALBの先のEC2)……という切り分けが、そのまま障害対応の第一歩になります。

07土台がそのままAWSになる — 対応表

ここまでのネットワークの基礎は、AWSの主要な設計要素にほぼ1対1で対応します。だから基礎をやる価値が高いのです。

ネットワークの基礎AWSでの対応ひとことで
IPアドレス/サブネット(CIDR)VPC / サブネット自分専用のネットワークを区切る
ルーティングルートテーブルどの宛先をどこへ流すか
ファイアウォール(ポート許可)セキュリティグループ(ステートフル)/ネットワークACL通信の許可・拒否
NAT(私設→公開の変換)NAT ゲートウェイPrivateから外へ出る
DNSAmazon Route 53名前解決
ロードバランサELB(ALB / NLB)複数サーバーへ振り分け
公開/非公開の分離Public / Private サブネット+IGW見せる層と隠す層
現場のコツ:この対応が腹落ちすると、AWSの学習速度が段違いになります。逆に基礎を飛ばすと、設定が"呪文の暗記"になり応用が効きません。急がば回れ——ネットワークが一番の近道です。各サービスの他クラウド対応はAWS・Azure・GCP・オンプレ 対応表もどうぞ。

08Linuxの基礎 — サーバーと会話する言語

クラウドで動くサーバーの多くはLinuxです。GUIではなくコマンド(シェル)で操作・調査するのが基本。最低限、次が使えれば戦えます。

# 例:サービスの状態を見て、ログで原因を追う
systemctl status nginx
journalctl -u nginx --since "10 min ago"
grep -i error /var/log/nginx/error.log | tail
現場のコツ:最初のゴールは「自分でLinuxサーバーを1台立てて、Webサーバー(nginx等)を動かし、SSHで入って設定・ログ確認までできる」こと。AWSの無料利用枠でEC2を1台作ってやってみるのが、何倍も身につきます。

09クラウドの基本概念 — 借りて使う、の作法

クラウドは「サーバーやネットワークを必要なとき必要なだけ借りる」仕組み。押さえるべき概念はシンプルです。

現場のコツ:主要サービスは、結局「計算・保存・つなぐ・貯める」の4カテゴリで捉えると迷いません(AWSなら EC2 / S3 / VPC / RDS)。まず1つのクラウド(AWS推奨)を深く。1つ極めれば他クラウドは対応表で読み替えられます。

10ID・セキュリティの基礎 — 事故の大半はここ

クラウドの事故で最も多いのが、権限とアクセス管理の不備です。最初に正しい感覚を持っておきましょう。

現場のコツ:AWSならIAMがこの中心。人にはSSO+MFA、プログラムには一時的な権限(ロール)を渡し、長期のアクセスキーをばら撒かないのが鉄則です。もっと深く知りたくなったらID統制の記事踏み台・特権アクセスの記事へ。

11可用性と監視 — 止めない、壊れたら気づく

「動いて当たり前」を支えるのが可用性設計と監視です。

現場のコツ:そして障害対応は"型"がある:①現象を正確に把握 → ②仮説を立てる → ③1つずつ検証(層で切り分け)→ ④直す → ⑤記録して再発防止。焦って闇雲に触らない。この型は、前述のネットワーク階層の知識があるほど速く回ります。

12IaC・自動化・Git — 手作業をやめる

クラウドエンジニアの主戦場は、実は「手で作る」より「コードで作る」です。これをIaC(Infrastructure as Code)と呼びます。

現場のコツ:最初から完璧なIaCは要りません。まずは「AWSでVPCとEC2を手で作る → 同じものをTerraformで書いてみる → 壊して再作成してみる」。手作業とコードの往復が、一番の学びになります。

13学習ロードマップと資格 — 遠回りしない順番

ここまでを、具体的な学習手順に落とします。

資格は地図とモチベーションとして有効ですが、ゴールではありません。必ず手を動かすとセットに。試験コードは改定されるので、最新は各公式サイトで確認してください。「資格はあるが何も作れない」が一番もったいない状態です。
現場のコツ:遠回りの典型:①いきなりKubernetes等の応用から入る ②動画を眺めるだけで手を動かさない ③複数クラウドを同時に浅く。1本の線(ネットワーク→Linux→AWS→IaC→作り切る)を太くするのが最短です。

14現場で効く"姿勢" — スキルより長持ちする

最後に、技術以上に効く姿勢を。未経験でもここが強い人は伸びます。

現場のコツ:EMWの現場でも、伸びる人はほぼ例外なくこの姿勢を持っています。知識は後から足せる。姿勢は土台です。

15EMWから — 基礎を積む人と、働きたい

ここまで読んで「大変そう」と思ったかもしれません。でも大丈夫——全員が最初は未経験でした。大事なのは、この地図を手に、少しずつでも手を動かし続けられるかどうかです。

EMWは、AWSを主軸にクラウド構築・移行・運用統制を手がける会社です。私たちが採用で見ているのは「今できること」以上に、基礎を積み上げる姿勢分からないことを調べて手を動かす力。この記事の土台を学ぶ気概がある方なら、経験の有無は問いません。

「もっと詳しく話を聞きたい」「今の学習の相談をしたい」——そんな段階でも歓迎です。採用情報・カジュアル面談はこちらから、気軽にどうぞ。

16よくある質問(FAQ)

未経験ですが、何から勉強すればいいですか?

ネットワーク(TCP/IP)から始めるのがおすすめです。IPアドレス・サブネット・TCP/UDP・DNS・HTTPが分かると、AWSのVPCやセキュリティグループが「暗記」でなく「理解」になります。次にLinux、そしてAWSを1つ、最後にIaC(Terraform等)。この順番が遠回りしません。

プログラミングはできないとダメですか?

最初から高度なプログラミングは不要です。まずはLinuxのコマンドとシェル、簡単なスクリプト(bash/Python少々)、そしてGitが使えれば十分スタートできます。クラウドエンジニアは「アプリを書く」より「基盤を組み・自動化する」職種で、IaC(設定をコード化)が主戦場です。

資格は取ったほうがいいですか?

学習の地図とモチベーションとして有効です。入門は AWS Certified Cloud Practitioner、登竜門は Solutions Architect Associate。ネットワークはCCNA相当の理解があると強い。ただし資格はゴールではなく、必ず手を動かして小さな環境を自分で作ることとセットにしてください(試験コードは改定されるので最新は公式で確認を)。

未経験でも採用されますか?

EMWは「今できること」より「基礎を積み上げる姿勢」と「分からないことを調べて手を動かす力」を見ています。この記事の土台を学ぶ意欲がある方は、経験の有無にかかわらずカジュアル面談からどうぞ。

EMWは「今できること」より「基礎を積み上げる姿勢」を見ています。未経験でも、この土台を学ぶ気概がある方はカジュアル面談からどうぞ。

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