AWS Summit Japan 2026(6月25日〜26日・幕張メッセ)が閉幕しました。今年の印象を一言で言えば「AIエージェント一色」。167のブレイクアウトセッションのうち約半数の83本がAIエージェント関連でした。ふと5年前を思い出すと、Summitはまだオンライン開催で、「生成AI」という言葉自体が会場に存在しませんでした。この5年の変化を定点観測として整理し、インフラを預かる立場から「次に何が来るか」を読んでみます。
01まず5年を1枚で
| 年 | 開催 | 主役だったテーマ | いま振り返ると |
|---|---|---|---|
| 2022 | オンライン開催 | クラウド移行、DX、内製化、コンテナ/サーバーレス | 生成AI登場前夜。主語は「クラウドをどう作るか」 |
| 2023 | 4月・幕張 4年ぶりリアル開催(来場約3.5万人) |
DX・データ活用が中心。生成AIはまだ脇役 | ChatGPT登場直後。潮目が変わる直前の静けさ |
| 2024 | 6月・幕張 「AWS Summit Japan」に改称 |
基調講演はほぼ生成AI。Claude 3の東京リージョン提供、Amazon Q、AI認定資格の日本語対応 | 生成AI元年。各社が一斉にPoCへ |
| 2025 | 6月・幕張 | 「生成AIにつきる」— 関連セッション前年比1.4倍。国内の生成AI導入率82%、CAIO設置55%(AWS調査)。Anthropicの東京オフィス開設発表 | PoCから実装へ。「使うか」ではなく「どう本番に載せるか」 |
| 2026 | 6月・幕張 | セッションの約半数がAIエージェント。Bedrock AgentCoreの新機能、既存のエージェント型IDE「Kiro」の拡張、ナレッジグラフ自動生成の新サービス「AWS Context」。基調講演ゲストにOpenAI Japan | エージェント運用元年。「作る」から「任せて統制する」へ |
並べてみると、主語が「クラウド」→「生成AI」→「AIエージェント」へと、ほぼ1年刻みで移っていったことがわかります。ここから読み取れるトレンドを3つに絞ります。
02トレンド1:主語は変わったが、土台の話は変わっていない
2026年の基調講演で語られたBedrock AgentCoreの中身をよく見ると、提供されるのはエージェントの実行基盤、アイデンティティ管理、セッション分離、監視・監査といった機能群です。つまり「AIエージェントの時代」に何が課題になるかといえば、権限設計・実行統制・証跡という、インフラ運用が20年やってきた話そのものです。
生成AIが主役になった2024年以降も、実際に本番導入でつまずくのはモデルの性能ではなく、「誰の権限で動かすか」「ログをどう残すか」「事故のとき誰がどう止めるか」でした。エージェントが業務プロセスに入り込むほど、この比重はさらに上がります。派手な新サービスの足元には、毎年同じものが置かれています。
03トレンド2:「様子見の猶予」が消えた
かつて海外発の新技術が日本のエンタープライズに浸透するまで、3〜5年かかると言われていました。生成AIはこのサイクルを1年刻みに縮めました。2023年に登場、2024年にPoC、2025年には導入率82%、2026年にはもうエージェントの話をしています。
今年象徴的だったのは、6月17日のAWS Summit New Yorkで発表されたAgentCoreの新機能やAWS Contextが、わずか1週間後の日本のSummitでそのまま紹介されたことです。グローバルの発表と国内展開の時差は、実質ゼロになりつつあります。「枯れてから採用する」という従来の安全策は、競合が1年先に実装を終えるリスクと表裏になりました。
04トレンド3:マルチモデルが前提になった
2024年のBedrockの目玉はClaude 3でした。2025年にはAnthropicが東京オフィス開設を発表。そして2026年、基調講演のゲストにOpenAI Japanが登壇しました。AWSの上でAnthropicのモデルもOpenAIのモデルも動く——数年前には想像しにくかった光景です。
基盤設計への含意ははっきりしています。特定モデルへの依存を前提にしない、ということです。モデルは今後も1年単位で世代交代します。アプリケーションとモデルの間に差し替え可能な層を置く設計(Bedrockのようなマネージド層の活用も含めて)が、AI基盤の標準要件になりました。
05今後の読み — インフラ屋の視点で
エージェント運用(AgentOps)が次の主戦場になる
2026年のセッション構成が示すとおり、論点は「エージェントを作る」から「本番で安全に動かし続ける」に移っています。人間とエージェントが混在する環境での最小権限設計、行動ログの証跡化、異常時の停止手順。来年のSummitでは、この運用論がより具体化しているはずです。
データ基盤の整備が再び前面に出る
AWS Contextのようなナレッジグラフ自動生成は、裏を返せば「散らかったデータのままではAIは使えない」という問題への回答です。オンプレに残るデータとクラウドの連携、部門ごとに分断されたデータの統合——地味ですが、ここへの投資がAI活用の成否を分けます。
クラウドAIとローカルAIの使い分けが定着する
すべての業務をクラウドの生成AIに寄せられるわけではありません。規制や守秘性の要件が厳しい現場では、閉域で動くローカルLLMとの併用が現実解として定着していくと見ています。「どこまでをクラウドに、どこからを閉域に置くか」の線引き自体が、設計スキルになります。
—まとめ
5年間でSummitの主語は3回変わりました。しかし毎年会場で確認できるのは、新しい主語が来るたびに、それを支える基盤——アカウント設計、権限、監視、証跡、データ連携——の重要性がむしろ増していくことです。エージェントに業務を任せる時代は、「任せて大丈夫な土台」を持つ会社から順に始まります。
参考情報
EMWは、AI活用の前段になる「土台づくり」——アカウント設計・権限統制・オンプレとのデータ連携・ローカルLLM構築——を得意としています。自社の現在地の整理からで構いません、お気軽にご相談ください。
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